第07話「愛、そのはじまり」 No2

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扉を開けた瞬間、強烈な光がぼくを襲った。目を閉じる―――が、全ては手遅れだった、光は眼球を蒸発させ、視神経を焼き尽くし、さらに脳髄をも浸食していく、悲鳴すら出せなかった、意識が混濁し、消失し、全ての生命活動を停止させる直前になっても光は執拗にぼくのカラダを犯しつづけた、それはまるで微かな記憶の残留すらも許さずに、ぼくという存在のすべてをこのよからけしさろうとしているみたいにおもえた
第07話「愛、そのはじまり」  2007.03.02

第07話「愛、そのはじまり」

CoM0 TrB0
「パンダに変身するぞ!」

「ええええええっ!?」
「四の五の言わずに、今から言う言葉をリフレインしてくれたまえ、アッダボ!」
「あ?」
「アッダボ!」
「あっだぼ」
「カメインレイラー!」
「かめいんれいらー」
「ザ・ストラグル・ヘッジファンド・タカノツメ!」
「ざすとらぐるへっじふぁんどたかのつめ」

フランス人の顔が紅潮し湯気が湧き上がっていた。

「おお!力がみなぎってくる、わ!熱い、体が熱い、ぞ!みたまえ、これが、世界最強のパンダの姿だ!」いや人間のままですけど「けちらしてくれよう、ギャングどもめ!」

と言って、フランス人(人間)はおもむろに立ち上がり、ぼくの前を通り過ぎようとし「アッ痛テェェェ」と叫び声をあげた。

「……こんどは、なんですか?」「つ、爪が、小指の爪が、テーブルにひっかけて、ほら」見ると左手の小指の爪が、きれいに剥がれていた。これは、痛い。人間でも。パンダでも。「痛ツー、記念に、これ、爪、あげるよ、サクライくん」「いやぁー」「……わたしに、もし、万が一のことがあったら、これが、形見になるから……」

そう言ってフランス人はぼくに爪を渡し、本当に、本当に、前方へ向かって歩いていった。ぼくはその後ろ姿をただ見送るしかなかった。もしかしたら、本気でくるってしまったのかもしれない。

でも、本当は、どうするつもりなのだろう? 相手は4、5人、もっといるのかもしれない。一人で勝てるはずがない。本当に命を捨てる気なのだろうか? それとも単なる時間稼ぎなのだろうか? そもそも、なぜあの人の口から「パンダになろう」という言葉が出たのか? パンダの秘密を、なにか知っているのだろうか?(ぼくも彼のために何かするべきなのではないだろうか)

キヒィーーンッという高音がいきなりが耳をつく。ぼくは両手で耳をふさぐ。誰かの視線を感じた。窓の外。巨大な黒い肉の塊が窓を覆っている。それは円形でぶよぶよしていて、中心から四方へ赤い筋が走っている。(なんだこれ!?)黒いゼリーみたいな塊は、白い牛乳の皮膜のようなものを周囲に従えている。(な!?)と思った瞬間、軽い衝撃波とともに、黒い塊と白い皮膜がはがれ落ちる。でもそれは落ちたのではなく、宙を飛んだのだ。白い皮膜の周囲は、みっしりと黒い森のような何かに覆われている。森は延々とどこまでもつづいている。黒いゼリーと、白い牛乳と、黒い森は、どんどん窓から遠ざかる。

やがてその全景が見えた。それは、巨大な黒いパンダだった。



***



ぼくは、もう一度しっかりと、窓の外を見る。

空、雲、山を抜けていく道、家、畑。
どこにも黒いパンダなんかいなかった。
(ぼくは、なにを見たのだろう?)

飛行機は相変わらず、まっすぐに飛行している。
ぼくは、立ち上がった。そして通路に出た。
第07話「愛、そのはじまり」  2007.02.28

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桜井白パンダ

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