今から7年前。
1999年11月4日。
渋谷のスクランブル交差点のまんなかで、
一人の女の子がいきなり僕に抱きついてきた。
最初、貧血か、ヒールのかかとでも折れて倒れてきたのかなと思ったら違った。
彼女に乱れた様子はなくて、
自分の両足でしっかりと地面の上に立ち、意識的に僕に抱きついていた。
(見つけたわ)というふうに。
僕は自分の置かれている状況がよく分からず、
思考が同じところをぐるぐると回っていた。
まるで恋人同士みたいな僕らの側を、
大勢の人が通りすぎていく。
何か言わないとと思った瞬間、
彼女が僕の耳元でそっとささやいてきた。
「パンダをさがして。私は世界を壊したくないの」
と。
信号が赤にかわった。
残された人たちが一斉に走りだす。
彼女も僕から離れて走りだした。
「パンダって……なに?」
彼女はかまわずに走っていく。
横断歩道の向こう側、人にまぎれて見失いそうになる。
僕は彼女に向かって大声で叫んだ。
「ねぇパンダってなんのこと!?上野のリンリン?ランラン!?」
彼女が振り向く。
僕を見つけたその目が、少しだけ、笑っているようにみえた。
そして、
人の中に消えた。
「パンダ」を「さがす」
「世界」を「壊したくない」
僕は鳴りつづけるクラクションの中で、
彼女の残した言葉をくりかえくりかえし考えていた。
第01話「パンダにまつわる個人的な二三の事情」
2007.02.081999年11月4日。
渋谷のスクランブル交差点のまんなかで、
一人の女の子がいきなり僕に抱きついてきた。
最初、貧血か、ヒールのかかとでも折れて倒れてきたのかなと思ったら違った。
彼女に乱れた様子はなくて、
自分の両足でしっかりと地面の上に立ち、意識的に僕に抱きついていた。
(見つけたわ)というふうに。
僕は自分の置かれている状況がよく分からず、
思考が同じところをぐるぐると回っていた。
まるで恋人同士みたいな僕らの側を、
大勢の人が通りすぎていく。
何か言わないとと思った瞬間、
彼女が僕の耳元でそっとささやいてきた。
「パンダをさがして。私は世界を壊したくないの」
と。
信号が赤にかわった。
残された人たちが一斉に走りだす。
彼女も僕から離れて走りだした。
「パンダって……なに?」
彼女はかまわずに走っていく。
横断歩道の向こう側、人にまぎれて見失いそうになる。
僕は彼女に向かって大声で叫んだ。
「ねぇパンダってなんのこと!?上野のリンリン?ランラン!?」
彼女が振り向く。
僕を見つけたその目が、少しだけ、笑っているようにみえた。
そして、
人の中に消えた。
「パンダ」を「さがす」
「世界」を「壊したくない」
僕は鳴りつづけるクラクションの中で、
彼女の残した言葉をくりかえくりかえし考えていた。