●7年前渋谷のスクランブル交差点で美少女が抱きついてきたところからこの長い長い物語は始まる。

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今から7年前。
1999年11月4日。

渋谷のスクランブル交差点のまんなかで、
一人の女の子がいきなり僕に抱きついてきた。

最初、貧血か、ヒールのかかとでも折れて倒れてきたのかなと思ったら違った。
彼女に乱れた様子はなくて、
自分の両足でしっかりと地面の上に立ち、意識的に僕に抱きついていた。
(見つけたわ)というふうに。

僕は自分の置かれている状況がよく分からず、
思考が同じところをぐるぐると回っていた。

まるで恋人同士みたいな僕らの側を、
大勢の人が通りすぎていく。

何か言わないとと思った瞬間、
彼女が僕の耳元でそっとささやいてきた。






「パンダをさがして。私は世界を壊したくないの」





と。


信号が赤にかわった。
残された人たちが一斉に走りだす。
彼女も僕から離れて走りだした。

「パンダって……なに?」
彼女はかまわずに走っていく。

横断歩道の向こう側、人にまぎれて見失いそうになる。
僕は彼女に向かって大声で叫んだ。

「ねぇパンダってなんのこと!?上野のリンリン?ランラン!?」

彼女が振り向く。
僕を見つけたその目が、少しだけ、笑っているようにみえた。
そして、
人の中に消えた。





「パンダ」を「さがす」 

「世界」を「壊したくない」




僕は鳴りつづけるクラクションの中で、
彼女の残した言葉をくりかえくりかえし考えていた。





第01話「パンダにまつわる個人的な二三の事情」  2007.02.08

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桜井白パンダ

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